毎日暑い日が続きますが、皆さまにはお変わりございませんでしょうか。私の方もすこぶる元気に府政活動をしております。さて、この夏の暑さのように、今、大阪府では大阪改革のための熱い動きが続いております。連日のテレビ・新聞の報道で、皆様も府政に大変な関心をお持ちだと思いますが、今回は、「橋下改革と大阪の課題」ということをテーマに大阪府政の現状をかいつまんでご報告申し上げたいと思います。
38歳青年知事の誕生
平成20年1月27日、行政経験皆無、全国最年少の38歳、従来の知事像とは全く違う青年知事が大阪に誕生しました。永らく閉塞感にあった大阪府民には、非常な新鮮感を与え、圧倒的な得票での当選でありました。
それからの橋下知事の活躍ぶりは、皆さんご承知のとおりですが、よく、皆様から聞かれるのは、「橋下さんずいぶん頑張っているけど、本当のところはどうなんですか。」という言葉です。
そこでちょっと振り返って、知事選挙が始まるまでの経過を申し上げておきたいと思いますが、太田前知事の三選不出馬の声明を受けて、自民党府議会議員団では直ちに知事候補の選考に入りました。そんな中で候補として浮上してきたのが、橋下さんでした。色んな意見がある中、大阪に懸ける情熱、行動力と決断力から橋下さんを支援しようという意見が高くなりましたが、最も大事なことは、政策の協議でした。このため私達は、都合3日間、併せて十時間にわたり橋下さんと政策の議論を行いました。そして、そこで議論されたことが、実は、今の橋下知事の政策の根幹になっていると言ってもいいかと思います。
特に、徹底的な財政再建の必要性と、そのためにはあらゆる府の施策を見直すこと、また、大阪を変えるためには、府県を超えた取組みや大阪府市連携が非常に重要であること、こうした議論の結果、府議会議員団としての推薦を決定したのであります。
府政のどこに問題があるのか
就任するやいなや、「大阪府は破産状態」「財政非常事態宣言を発します」という橋下知事の言葉には、皆さんずいぶん驚かれたと思います。
表1は今の大阪府の財政構造を表した表ですが、左側が収入、右側が支出です。大阪府の年間の予算は約三兆円ですが、このうち国からの補助金や府の借金である府債などを除いた府の純然たる収入を一般財源といいます。この一般財源ベースでまとめた19年度の府の収支がこの表です。府税収入や国からの交付税等の収入で、その年の支出を賄うわけですが、ところが、表右の支出全部を賄うだけの収入がありません。このため、その不足分を埋めているのが、表の左上の減債基金からの借入れなのです。つまり、減債基金から約一千億円の借入れをして初めて帳尻があうというのが、府の財政状態でありました。
減債基金といっても、皆さんお分かりになりにくいと思いますが、早く言えば、府の借金返済のための積立金です。府はいろんな事業を行っていますが、道路や橋をつくったり、学校を建てたりもします。これらの施設の建設費は一定の期間に分割して償還することになります。民間で言えば住宅ローンのようなもので、府債を発行し、銀行などから借金をして、これを三十年間で返済していく、そのための返済資金を毎年積み立てて準備しておきます。この積立金を減債基金と言います。
この減債基金から、毎年の予算の不足分を借り入れてようやく資金繰りしてきたのが、府の財政ですが、減債基金といえども所詮借金であり、その年の支出はその年の収入に見合ったものにすべきだというのが橋下知事の財政改革の根本の考え方でした。そのためには、まず、減債基金の借入れ分に相当する支出を削り、収支を均衡させる。それを今年度から直ちに実施していこうというのが、今回の改革案です。
今まで何をやってきたのか
テレビやマスコミで今まで大阪府は、一体何をやっていたのかという報道がありますが、別表2は、これまでの大阪府の財政健全化への取組みと今回の橋下知事による改革の取組みを表にしたものです。バブル経済崩壊のあと、大阪経済の落ち込みは全国でも最も激しく、ピーク時八千億円あった法人二税も最悪時は三千五百億円、毎年五千億円も税金が落ち込むという年が続きました。このため、大阪府では平成10年より三次に渡り財政改革をおこなってきました。
ところが、ようやく収支均衡するかなという時に、国の三位一体の改革で地方と国の税配分の変更があり、結果的には実質税収入がまた落ち込むということになり、悪戦苦闘を続けているのが府財政の実態であります。
この間、表6のように職員の給与改革や一般職員数の大幅な削減を進めてきましたが、ただ、表1・表6でごらんのとおり、府の人件費の大部分をしめるのは、教員や警察官であり、さらにこの人数は法令にもとづいて配置されており、減らす事ができないというジレンマがあります。
こうしたなかで、数は減らせなくても、さらに単価を減らそう、また、今までの仕組みを根本から変えていこう、聖域はつくらないというのが、今回の橋下改革案の大きな特徴であると言えます。
橋下改革とは何か
まずは出血を止める、その上で、次の一手を」というのが橋本改革の基本方針であります。表3はこれからの三年間を集中期間とし、この期間の改革目標額をまとめたものですが、初年度の今年から一、一〇〇億円の収支改革をおこない、三年間で約三千億円、九年間で、六千五百億円の収支改善を図ることを目標にしています。
表4・表5はその中身を簡単にまとめたものです。表4にありますように一般施策経費や建設事業では今年度三二〇億円を縮減、表5のように、最大の課題である人件費については、一般職員はもとより、教員や警察官も含め、毎月の給料や、退職金も大幅減額することとしています。さらに、収入の面でも可能な限り増収をはかることと致しております。
このため、府の行っている二八八〇の事業のすべてを見直し、廃止や減額することとなりましたが、それぞれの事業は府民の皆さんの生活に直結しており、色んな意見や要望が相次ぎ、府立の施設の廃止や移転についてはテレビや新聞で連日報道されたとおりです。
府議会では、知事からの要請を受け、7月1日から7月23日まで臨時府議会を開催し、この改革案にもとづく平成20年度の本格予算案の集中審議を行い、白熱した議論の結果、
知事からの私学助成等の一部修正の提案をうけて、賛成多数でこの改革案を可決いたしました。
また、議会も、議員報酬や政務調査費の15%削減や、旅費規程の全廃を全会一致で決定するとともに、これからも、議員定数の見直しや議会基本条例の策定など議会改革に務めることといたしました。
大阪を輝かせるために
この改革案が実行されれば、課題が片付くのかということになりますが、問題はそんなに簡単ではありません。実は、大阪府の財政構造の問題は、二つの問題から引き起こされています。ひとつは、国や地方の制度が今日の時代に適合していないために起こっていること、もうひとつは、現在の大阪経済に八八〇万人大阪府民の生活を支えるだけの力がなくなっているということです。
この問題の解決は、府の支出を削減すればというようなことでは解決しません。こうした意味では、橋下改革の本当の正念場はこれからだと言わなければなりません。国との問題、大阪市や関西各県との問題、産業振興の問題と取組むべき課題は山のごとくあります。
12月には、削減するだけの改革でなく、これからの大阪をどうつくっていくかのグランドデザインが橋下知事より府議会に提案されることとなっています。
まさにこれからが、橋下知事の言う「大阪を輝かせるために」知事と議会が両輪となって、懸命の努力をしていかねばならぬ時だと思っています。
大阪府議会議員 酒 井 豊